【※暴力・性的表現あり 苦手な方はお控えください】
連続殺人犯とは
FBIによる殺人の類型によれば,連続殺人とは,一般的に,長期にわたって最低でも3人以上を殺害する事件と定義されます(Douglas et al., 1986)。殺人と殺人の間には冷却期間とよばれる時間の間隔があり,その期間は,数日から数週,または数ヵ月や数年になることもあります。
殺人は計画的で,類似した被害者を選ぶケースが多いとされています。
さて,連続殺人犯についてはどんな類型が提案されているのでしょうか。
連続殺人についてもっとも有名な類型は,ホームズとデバーガー(Holmes & De Burger, 1988)が提案した4種類です。
ホームズとデバーガーは,アメリカの刑務所に収容されている連続殺人犯への面接や事例研究をとおして,殺人犯を動機の種類で分類し,幻覚型(visionary),使命型(mission),快楽型(hedonistic),パワー・コントロール型(power/control)という4つの類型を提案しました。
それぞれの特徴について,以下で解説します。
幻覚型(visionary)
幻覚型の犯人は,精神障害の影響で幻覚型の体験をしています。
幻覚は,かれらが見知らぬ他人を殺す行為を正当化するものであり,犯人は,幻視や幻聴のかたちで現れる神や悪魔などに導かれて,被害者を殺害します。
幻覚には,自己防衛的なもの(「血を飲まなければ体が砂になる」「命を狙われている」)と指令的なもの(「世界を救うためには人を殺さなくてはならない」)などがあると言われています。
使命型(mission)
by The U.S. Army
使命型の犯人は,特定のカテゴリーの人々を抹殺にしなければならないという偏った信念をもっているタイプで,たとえば,売春婦,麻薬中毒者,カトリック信者,ユダヤ人などのカテゴリーをねらって連続殺人を犯します。
幻覚がなく,日常生活でも異常な行動を示さないことから,このタイプは指令的な幻覚による幻覚型と区別されます。
このタイプの典型的な犯人は秩序型にあてはまり,犯行は計画的で,殺傷能力の高い凶器で素早く被害者を殺害します。
かれらは自分が望む社会を実現するため,多くが逃走しながら犯行を継続しようとします。
使命型の犯人は,特定のカテゴリーの人々を抹殺にしなければならないという偏った信念をもっているタイプで,たとえば,売春婦,麻薬中毒者,カトリック信者,ユダヤ人などのカテゴリーをねらって連続殺人を犯します。
幻覚がなく,日常生活でも異常な行動を示さないことから,このタイプは指令的な幻覚による幻覚型と区別されます。
このタイプの典型的な犯人は秩序型にあてはまり,犯行は計画的で,殺傷能力の高い凶器で素早く被害者を殺害します。
かれらは自分が望む社会を実現するため,多くが逃走しながら犯行を継続しようとします。
快楽型(hedonistic)
快楽型の犯人は,性的な興奮を得るために殺人を行います。
かれらにとって暴力と性的快感は密接に結びついたものであり,「殺害すること」よりも「殺害までのプロセス」をより重視した犯行を行います。
そのため,犯行には十分な時間をかけて,カニバリズム(人肉食)や手足の切断,死体の姦淫などさまざまな行為を行う可能性があります。
犯行は一般に秩序型にあたるもので,計画性が高く,拷問をともないます。
犯人のほとんどは男性であり,性的な対象(異性愛者なら女性,同性愛者なら男性)をねらって殺害します。また,好みのタイプを選んで殺害することが多いため,被害者の容姿や年齢などの特徴が共通する場合が多いと言われています。
パワー・コントロール型(power/ control)
パワー・コントロール型の犯人は,無力化した被害者の生死を完全にコントロールすることで性的な快感を得ようとするタイプです。
かれらは,一般に精神疾患などはなく,自分の行為が社会的なルールからはずれていることを知りながら,あえてそうした行動を選択しています。
このタイプの犯行も秩序型であり,快楽型と同様に「殺害までのプロセス」を重視して,拘束した被害者に,強姦や拷問などを行いながら,時間をかけて殺害行為を行います。
バートルとバートルによる類型の追加
ホームズとデバーガーが提案した類型について,バートルとバートル(Bartol & Bartol, 2005)は,さらに承認欲求型(recognition seeker)と物欲型(material-gain seeker)という2つの類型を追加できると指摘しています。そこでこれらのタイプについても,最後に簡単に解説したいと思います。
承認欲求型(recognition seeker)
承認欲求型の犯人は,有名になりたい,知名度を得たいという欲求を満たすために殺人を犯します。
かれらは自分がいかにたくさんの人々を殺したかについて自慢するために,ときには自分が犯していない殺人を自分の犯行として自供したり,自分が殺害した被害者の数を多くいつわったりする可能性があります。
物欲型(material-gain seeker)
物欲型の犯人は,金銭などの利益を得るために殺人を行います。
このタイプには,さきほどのホームズとデバーガーが快楽型の特殊なタイプとして説明している,いわゆる「殺し屋」であったり,家族や関係者からなんらかの利益(財産,保険金)を得ようとする殺人犯といった人々があてはめられます。
なかでも,家族などから利益を得ようと殺害する犯行は,女性の連続殺人犯に多いことが知られており,黒い未亡人型(black widow)として他の殺人犯と分けて説明する考え方もあります(越智, 2013)。
女性の連続殺人犯については,ほかにも独特なタイプの類型が提案されているので,別の記事でまとめたいと思います。
引用文献
- Douglas, J. E., Ressler, R. K., Burgess, A. W., & Hartman, C. R. (1986). Criminal profiling from crime scene analysis. Behavioral Sciences & the Law, 4 (4), 401-421.
- Holmes, R. M., & De Burger, J. (1988) . Serial murder. Newbury Park, CA: Sage.
- Bartol, C. R., & Bartol, A. M. (2005). Criminal Behavior: A Psychosocial Approach. 7th ed. NJ. Saddle River: Pearson Education. (バートルC. R., & バートルA. M. 羽生和紀(監訳)横井幸久・田口真二(編訳)2006 犯罪心理学 行動科学のアプローチ 北大路書房)
- 越智啓太 (2013). ケースで学ぶ犯罪心理学 北大路書房
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