犯罪学の創始者:チェーザレ・ロンブローゾ
なぜ人は犯罪を犯すのか?その答えを見つけようと,これまでにたくさんの研究が行われてきました。このブログでは,そうした研究についても取り上げていきたいと思います。
さて,はじめに紹介する研究としては,はじめて犯罪者の特徴を客観的な方法で調べようとした,ロンブローゾ (Cesare Lombroso:1835-1909)の研究がふさわしいでしょう。
ロンブローゾは,イタリアの医師,弁護士であり,犯罪学の創始者とも言われています。

by Materialscientist

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生来性犯罪人説
ロンブローゾが研究を始めるきっかけとなったのは,1872年に行った,イタリア南部カラブリアの山賊,ジュセップ・ビレラ(Giuseppe Villella)の検死と言われています。この検死で,ロンブローゾは頭蓋骨の下部に特徴的なくぼみを発見しました。
そしてその後,刑務所に収容されている犯罪者の身体と精神の特徴を,兵士の特徴と比較した結果,以下のような特徴で犯罪者を識別できるという結論にたどりつきます。
身体的特徴
- 小さな脳
- 厚い頭蓋骨
- 大きな顎
- 狭い額
- 大きな耳
- 異常な歯並び
- 鷲鼻
- 長い腕
精神的特徴
- 道徳観の欠如
- 残忍性
- 衝動性
- 怠惰
- 低い知能
- 痛感の鈍麻
さらに,1876年に出版した「犯罪人(L’uomo delinquente)」 の中で,かれは以下のような仮説を提唱しています。
- 犯罪者は,現代の人類への進化が不十分な別の種である
- この種は,身体と精神の構造が,現代人と原始人の中間にある
- この種は,「生来性犯罪人(ホモ・デリンクエンス)」とよび,未発達な人間以下の種への先祖返りである
「犯罪人」の中では,犯罪者の具体的な例としてこんな絵も添付しています。



このように,ロンブローゾの主張は「犯罪者は見た目でわかる」というとても乱暴なものですが,じつは,そのころ流行していたダーウィンの進化論の発想を取り入れた,当時としては先進的なものでした。
犯罪者を「自然のあやまちによって生まれた突然変異」とまで考えていたロンブローゾですが,死後に測定されたかれ自身の脳が平均以下のサイズ(1308グラム)だったことは,皮肉な事実として知られています。
とはいえ,ロンブローゾの研究は,犯罪者の特徴についてはじめて目に見えるかたちでデータをあつめて,客観的な方法で調べようとしたものとして,その功績は大きいと考えられています。
実際に,かれの主張は多くの批判を受けることになりますが,結果として犯罪の生物学的な原因に注目をあつめ,その後広く研究が行われていくきっかけになりました。
おまけ
ロンブローゾの「犯罪人(L’uomo delinquente)」 は,ローマ大学のアーカイブに保存されており,現在はPDFとしてダウンロードすることもできます(もちろんイタリア語ですが…)。
それと,トリノ市内にはロンブローゾの功績をつたえる博物館が建設されています。
イタリア・トリノ市のオンラインニュースTrino Todayによると,ロンブローゾ博物館は,2009年11月にリニューアルオープンされ,彼が研究で使用した904個の頭蓋骨をはじめとする多くの所蔵品が展示されているそうです。
犯罪の研究をこころざす人にとっては,原点となる資料が見られる貴重な施設といえるでしょう。ぼくもいつか行ってみたいです…!

by régine debatty
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