
by West Midlands Police
バタラー(DV加害者)と心拍数
今回のテーマは,DVのなかでも妻に暴力をふるう男性に焦点をあてた類型です。
アメリカでは, DV事件の加害者をバタラー(batterer)とよびます。
バタラーについては,他にもいくつか類型の研究がありますが,今回ご紹介するガットマンら(Gottman, Jacobson, Rushe, Shortt, 1995)の研究の興味深い点は,心拍数の高さでバタラーを分類しようとしたことです。
かれらは,過去の研究を調べた結果,以下の仮説を立てて,心拍数とDVの関連を調べました。
- 生物学的な反応性が低い(刺激に対する体の反応が鈍い)人は,より強い刺激を求めてハイリスクな行動や犯罪につながるかもしれない
- 心拍数の高さは,敵対的な心理特性や夫婦間での敵対的な行動と関連しており,このことが,乱暴で挑発的なバタラーの特性につながるかもしれない
そして,実際にガットマンらは,夫から妻へのDV問題を抱えている61組の夫婦を対象に,これらの仮説を確認する研究を行いました。
研究では,はじめに数分間目をつぶってリラックスした時の心拍数を測定した後,妻と会話などの交流をさせて,そのときの心拍数をリラックス時のものと比較しました。
その結果,12名に心拍数の減少,49名に心拍数の増加がみとめられ,すべての男性に妻との交流で心拍数の変化が起きました。
ガットマンらは,この2つのグループをそれぞれコブラ型(心拍数減少)とピットブル型(心拍数増加)と呼んで,それぞれの特徴をまとめています。
コブラ型

- 生涯を通じて,妻以外のさまざまな人(友人,同僚,見知らぬ人など)に暴力的な傾向をもつ
- 反社会的な行動傾向があり,サディスティックな攻撃性をもつ
- 言語的な攻撃性が高い
- 薬物依存者であることが多い
- 多くが両親の間のDV(父→母,母→父)を目撃している
- ナイフや銃器で妻を脅迫する傾向が強い
- 感情を支配し自分に従わせるため,あえて妻に自立を勧めている
- 妻との葛藤場面では,いきなり強烈に好戦的,傲慢,侮辱的,防衛的になり,時間が経つことで徐々に落ち着いていく
- それに対する妻の反応は,恐怖と服従である
ピットブル型

- 暴力の対象は妻だけの場合が多い
- 反社会性はそれほど高くない
- 両親の間のDVを目撃しているケースは少ない
- 凶器を使った脅迫はあまりみられない
- 妻の自立に強く嫉妬し,恐れている
- 彼の中で夫婦関係は勢力争いになっている
- 妻との葛藤場面では,徐々に怒りが増していき,最終的には怒りで自分をコントロールできなくなる
- 妻の怒りを抑えるよりも妻を自分との交流場面にとどめておこうとする
- それに対する妻の反応は,徐々にエスカレートする敵意である
サイコパス?決して逃げられないコブラ型
この研究では,最初の実験から2年後に,追加の調査としてそれぞれの離婚率を調べています。その結果,2年後の離婚率は,ピットブル型が27%,コブラ型が0%となりました。
また,これらの類型については,他の心理特性との関係が指摘されています。
ピットブル型は,野心や闘争心と同時に,短気であわただしいライフスタイルに特徴づけられる,タイプAと呼ばれるパーソナリティとの関連が指摘されています。
一方のコブラ型については,その犯罪性の高さや,サディスティックな傾向などからサイコパシー傾向との関連が指摘されています。
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