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女性の犯人に注目した連続殺人の類型

連続殺人については,これまでに動機による分類行動特徴による分類を取り上げてきました。

ですが,連続殺人はほとんどが男性による事件のため,これらの分類を女性の犯人にあてはめるのは望ましくありません。

そこで今回は,女性による連続殺人というちょっと特殊な犯罪を取り上げます。

ホームズとホームズHolmes & Holmes, 1998)は,女性による連続殺人について,幻覚型(visionary),安楽型(comfort),快楽型(hedonistic),パワー探求型(power seeker),信奉者型(disciple)の5つの類型を提案しています。

今回は,以前の記事でまとめたホームズとデバーガーの類型と内容が重なる,幻覚型,快楽型を除き,安楽型,パワー探求型,信奉者型についてまとめます。

安楽型(黒い未亡人)

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安楽型の犯人は,金銭などを目的として,親しい被害者を殺害します。

犯行は理性的・計画的で,被害者は,殺害後に得られる利益を基準として選ばれます。

犯人は,被害者の親しい友人や妻などになる過程で,被害者を選択したり殺害の機会をうかがったりするために,1件の殺人に長い期間をかけることもあります。

殺害方法は,刺殺や事故死に見せかけるなどの すぐに殺害できる方法をもちいることもありますが,毒を飲ませて徐々に弱らせるといった時間のかかる方法をもちいるケースもあります。

なかでも,比較的多くのケースでみられる夫を殺害するケースは,黒い未亡人(black widow)とも呼ばれ,越智(2013)によって細かい分類が示されています。

パワー探求型(死の天使)

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このタイプは,ホームズとデバーガーの類型におけるパワー・コントロール型に似た特徴をもち,被害者の生死をコントロールすることで欲求を満たそうとします。

特に看護師に多くみられることから, 死の天使(death angels)とも呼ばれます。

犯行では,勤務する病院の患者に毒物を与えて,症状が悪化した後に献身的な看護で回復させることをくり返します。

そして最終的に患者が死ぬと,次の被害者へ目標を移して殺害行為をくり返します。

背景としては,低い自尊心無気力感を補おうとして犯行にいたる可能性が指摘されています。

これには,救急処置室や手術室といった人の生死に関わる現場で,何度も命を救えない経験をすることによる無力感や,医師にくらべて医療行為では目立たない立場でも,自分の能力を見せつけて目立ちたいという欲求など,いくつかのタイプがあるようです。

また,自分で放火した現場へ駆けつけて消火活動をすることで,他人に認められたいという欲求(承認欲求)を満たそうとする消防隊員(または消防団員)のヒーロー願望との類似性も指摘されています。

ホームズとホームズの説明では,看護師以外にベビーシッターが子どもを連続して殺害するケースも報告されていますが,最近では,職務形態が似ている介護の仕事でおなじタイプの事件が報告されています(越智, 2013)。

信奉者型

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信奉者型の犯人は,カリスマ的な男性リーダーの指示のもとで,殺人を繰り返します。

彼女たちのおもな動機は,彼女たちにとっての「アイドル」に受け入れられ,認められているという心理的な満足感と言われています。

大抵の場合,被害者はリーダーによって選ばれるため,犯行には実行犯である女性よりもむしろリーダーの意思が反映されます。

犯行では,リーダーの意志にしたがって,暴行や拷問,レイプなどをリーダーと協力して,または単独でも行います。

殺害方法は,銃で撃つ,首を絞める,溺れさせる,毒物を注射するなど,さまざまな方法で行われる可能性があります。


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