性犯罪については,少年による性犯罪(性非行)に注目した研究も,とくに矯正分野で,性犯罪者のリスク・アセスメント(犯罪者が再犯する可能性を予測する手続き)や処遇プログラム(刑務所などの施設を出た後の再犯を防ぐための取り組み)との関連で報告されています。
そこで今回は,大江ら(2008)が性犯罪少年について提案した,反社会的・衝動群,非社会的・性固執群,一過的/潜伏群という3つの類型をご紹介します。
反社会的・衝動群(Antisocial-Impulsive)
外向的で,周囲の人との人間関係をスムーズに作る能力がある一方で,衝動的で,感情にまかせた行動が多いのがこのタイプです。
社会への適応力が低い傾向があるため,学校や仕事を長く続けられないことも多いとされています。
再犯の場合は性非行以外の犯罪におよぶ可能性が高く,他のさまざまな犯罪をおこなう中で,レイプ(強姦)などの重大な非行におよぶケースもあります。
非社会的・性固執群(Undersocial-Hypersexual)
神経質で内向的な一方で,目立ちたい・自分を大きく見せたいといった自己顕示性をもつのがこのタイプです。
物事をゆがんで受け止める傾向があり,不満をつのらせやすいのもこのタイプの特徴です。
学校や仕事などの社会的な枠組みに表面的にはしたがうものの,実際には社会への適応力に問題を抱えており,家族・友人など周囲の人との関係はあまりうまくいかないケースも多いとされています。
非行の内容としては,性非行を一貫して繰り返す傾向があります。
一過的/潜伏群(Transient/Latent)
このタイプは,認知のゆがみなどの問題が見られるものの,他の群に比べて人格的な偏りが小さく,社会への適応力や周囲からのサポートに恵まれています。
他の犯罪を犯したり,性非行を繰り返す傾向は低く,実際に再非行の割合も低いとされており,比較的恵まれた環境にいたことから,それほど犯罪性が高まらなかった可能性も指摘されています。
ただし,性非行の経験によって性的な関心や行動が強化され,非社会的・性固執群に移行する可能性を考慮して,「潜伏群」という名称が付けられています。
類型化の先にある再非行予防
最初に書いたとおり,今回の類型は性犯罪者のリスク・アセスメントや処遇プログラムとの関連で行われた研究の成果です。
では,こうした類型はどのように再非行を防止する取り組みに活用されるのでしょうか?
大江ら(2008)の研究からは,類型を活用するときのポイントとして以下の2点があげられます。
- リスクの高い少年により集中的な処遇・治療を行うこと
- 各群の特性に合わせた処遇・治療を行うこと
再非行のリスクが高い少年に集中的な処遇を行うことは,限られた職員と時間のなかで最大限の効果を得るために,合理的な方法です。
また,リスクの低い犯罪者に集中的な処遇をおこなうと,かえって再犯のリスクを高める恐れがあるともいわれており,リスクに応じた処遇はこうした面でも重要です。
類型ごとの特性に目を向ければ,性非行を繰り返すリスクが高い非社会的・性固執群には性犯罪に特化した内容,性非行以外の犯罪をおこなう可能性が高い反社会的・衝動群には幅広い非行を対象にした内容で処遇を行うといった方法も考えられます。
このように,類型化の研究は,犯罪の特徴を理解するといった基礎的な目的だけでなく,現場の取り組みにも活用されることを目指して行われています。
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