silhouette-905431_1280
性的に逸脱した行動をする未成年の女性は,女性の性犯罪者のなかでもさらに認知度と研究の数が低下する分野です。

ですが,女性の性犯罪少年と他の性犯罪者との間に多くの違いが指摘されていることからも(Vick, McRoy, & Matthews, 2002),専門家にも焦点を当てられることのほとんどないこの分野で,独自の類型を見つけて理解することは重要です。

ヴィックらVick, McRoy, & Matthews, 2002)は、過去に女性の性犯罪少年を類型化した研究をまとめて,総合的に以下の3つの類型を提案しています(ヴィックらはとくに類型ごとの名前を付けていないので,ここでは類型の特徴をもとにした仮の名前を使用します)。

性的未熟/実験者型

強い好奇心から犯行に及ぶのがこのタイプで,多くの場合,ベビーシッター中に預かっている子どもに対して性的な虐待を行います。

虐待行為では,暴力などは見られず,虐待の期間も比較的短いのが特徴です。

このタイプは,比較的正常な家庭環境をもち,精神疾患もみられないか低いレベルにとどまることが多いとされています(Mathews, Hunter, & Vuz, 1997; Mathews, 1987)。

また,人付き合いが苦手で,性的なことに対して好奇心と同時になんらかの不安を抱えている可能性も指摘されています。

被虐待者型

複数の子どもを対象に,幅広い性的な虐待行為を行うのがこのタイプです。

犯行では,とくに家族や親戚,知り合いに対して虐待をするケースが多くみられます。

このタイプは,過去に性的な虐待を受けた経験をもつケースが多く,自分が行う虐待行為も彼女自身の被害体験の結果として発生している可能性があります。また,薬物の乱用や売春といった犯罪に関与している可能性があります。

家庭環境は比較的重大な問題を抱えており,中レベルから高レベルの精神疾患をもっています。さらに,性的未熟/実験者型とおなじく人付き合いが苦手な傾向が指摘されています。

治療は性的未熟/実験者型よりも困難で長期化しますが,治療後の経過は良好なケースが多いようです。

従属型

ボーイフレンドや夫など,影響力の大きい男性から脅されて犯行に至るのがこのタイプです。

犯行は幅広いタイプの被害者を対象に行われますが,共犯者の男性に比べると攻撃性は低いとされます。

また,自分の子どもを男性と一緒に虐待する可能性もあり,最終的には自傷行為や自殺に至るケースも考えられます。

このタイプは,従属的で,孤独,自尊心が低いといった特徴があり,重度の性的・身体的な被虐待経験と,問題の多い家庭環境に置かれています。

感情障害や行為障害,PTSDなどの精神的な問題を抱えているケースもみられ,治療も困難で長期の施設内処遇が必要とされています。


はじめての方へのおすすめ記事
犯罪心理学ってなに? 
専門家ではないあなたが犯罪心理学を学ぶべきたったひとつの理由 
さあ、学びをはじめよう。犯罪心理学のおすすめ入門書3選

本気で学びたい人へ!どこよりも詳しい大学リスト 
【全国】犯罪心理学が学べる大学・大学院16選 

犯罪心理は潰しがきかない?いろんな仕事がありますよ! 
犯罪心理学にかかわる仕事をご紹介 

犯罪を分類して理解しよう 
さまざまな犯罪の類型 

犯罪の原因を探る 
人はなぜ犯罪をするのか  

write62 
犯罪心理学に関するご質問を受付中!Facebookグループもあります。