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最近の研究で犯罪を予測する心理学的な要素として重視されているのが,セルフコントロール(自分の行動をコントロールする能力)の低さです。

セルフコントロール理論は,ゴットフレッドソンとハーシ(Gottfredson & Hirschi,1990)が提唱したもので,かれらの理論では,セルフコントロールの低い人を以下のように定義しています。
 
  1. 一瞬の欲望を満足させようとする(いまさえよければいい
  2. 勤勉さ,粘り強さ,持続性に欠けている
  3. 冒険好きで活動的,言葉より身体を使うことを好む
  4. 結婚,仕事,対人関係の面で不安定
  5. 訓練が必要な技術をもたない
  6. 自己中心的で他人の苦痛や欲求に無関心
  7. 犯罪以外にも喫煙,飲酒,賭博への依存がある
  8. 人と群れて行動するときに犯罪に巻き込まれやすい
  9. 忍耐力がなく,争いがあると言葉よりも暴力で応じる

この理論では,セルフコントロールが高い人は欲求を我慢する能力が高く,長期的な視野でものごとに取り組むことができるため,高い学歴や高い職業的地位を得る傾向があると考えます。

その一方で,セルフコントロールが低い人は,衝動的で短期的な欲求を満たそうとする傾向があるため,犯罪やあまり適応的でない行動(過度の喫煙や飲酒など)を行う可能性が高くなります。

セルフコントロールの高さは幼少期のしつけなどの影響が大きく,6歳から8歳までに家庭やそれに代わる環境での教育を適切に受けることが重要とされています。

セルフコントロールと犯罪

欧米の各国(オランダ,スイス,アメリカ,ハンガリー)で青少年(8,000人)を対象とした大規模な研究では,セルフコントロールの低さと犯罪が関連していることが示され,セルフコントロールが,さまざまな性格特性の中で犯罪と最も強く関連するものとして指摘されています(Vazsonyi et al., 2001)。

日本でも,セルフコントロールの低さが犯罪者の犯罪傾向を強めることや(河野・岡本, 2001),中学生と高校生の逸脱行為の多さと関連すること(鈴木ら, 1996)が報告されています。

また,セルフコントロールは周囲の人々からの影響の受けやすさとも関連があります。ライトら(Wright et al., 2001)の研究では,まわりに非行少年の友人が多い環境で,セルフコントロールが低い人が非行に走る傾向が大きく上昇するのに対して,セルフコントロールが高い人では非行率があまり上昇しないことが報告されています。

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