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性犯罪は,一般的に「男性が10代〜20代の若い女性を狙って行なわれるもの」というイメージが広く浸透しています。

ですが,実際に性犯罪の被害にあう人は,10歳にも満たない少女であったり,70代や80代の年配の女性であったり,あるいは男性のケースもあります。

こうしたあまり表に出てくることのない性犯罪は,一部の熱心な研究者たちによって注目され,類型化を含めた研究が進められています。

なかでも今回は,高齢の女性を対象とした性犯罪者の類型を提案したバージェスらの研究Burgess et al., 2007)をご紹介します。

バージェスらは,高齢者への性犯罪を,機会型(Opportunistic),怒り拡散型(Pervasive Anger),性欲型(Sexual),復讐動機型(Vindictive motivationの4つに分類しています。

機会型(Opportunistic)

たまたま見かけた被害者を狙って,その場で一時的な性的満足を得ようとするのがこのタイプです。

犯行は衝動的で計画性も低く,その背景に性的なファンタジーや儀式的な行為がみられることはほとんどありません。

大抵の場合,機会型の犯人は社交性が低く,対人関係への意識が欠落しています。そのため,犯行では被害者の感情を気にかける様子はありません。

このタイプが他の類型にくらべてもっとも特異な点は,性交はせず,その他のさまざまな性的行為を行なうことです。

こうした傾向は,子どもを対象とした性犯罪者の一部にも見られる特徴と言われています。

怒り拡散型(Pervasive Anger) 

このタイプの犯行は,被害者に対して過剰な暴力をふるうのが特徴で,たとえ被害者が犯人の言いなりになったとしても,暴力をふるい続けます。

一方で,被害者の抵抗は犯人の暴力性をさらに高めることになり,被害者が傷害を負ったり,最悪のケースでは殺害されることもあります。

かれらは明らかに「怒り」に突き動かされて犯行に及んでおり,その行動に性的な要素は少なく,背景にも性的なファンタジーはみられません。

怒り拡散型にとっての暴力はもはやライフスタイルの一部になっており,その怒りや暴力は男女に関係なく向けられます。

したがって,かれらが行うレイプは,「怒り」を背景として現れるさまざまな逸脱行動の1つとして認識されています。

性欲型(Sexual)

このタイプの犯人は,性的欲求を満たすことにのめり込んでおり,ポルノの使用頻度も多く,性的なファンタジーやコントロールできない性的衝動を頻繁に経験しています。

かれらは,日常生活においても,性的欲求を満たすためにさまざまな「代替品」を使用します(たとえば,マッサージ店,成人向け映画,風俗店,ストリップバーなど)。

また,レイプ以外のさまざまな逸脱した性的行動(性的倒錯)を行うこともあります(たとえば,のぞき,露出症,フェティシズムなど)。

性欲型の犯行は計画的なことが多く,犯行の流れもスムーズで,道具の準備や逮捕から逃れるための計画が行われることもあります。

また,犯行の背景にファンタジーがみられることから,比較的めずらしい老人性愛(ジェロントフィリア)と呼ばれる性的嗜好をもった性犯罪者の多くも,このタイプに含まれると思われます。

復讐動機型(Vindictive motivation)

このタイプの犯行の中心は「女性への怒り」です。怒り拡散型も「怒り」を背景とした犯行ですが,復讐動機型は怒り拡散型とは違って,女性のみに怒りが向けられます。

犯行では,性的な攻撃によって被害者の身体を傷つけ,品位を落とし,屈辱を与えることが1番の目的になります。

かれらの女性にたいする怒りは,「きたない言葉でののしる行為」から「残忍な殺害行為」まで,さまざまな行為のレベルや種類として現れます。

このように,復讐動機型の犯行にはサディスティックな傾向が見えますが,それとは対照的に日常生活ではあまり衝動的でなく,どちらかといえば自分の衝動をコントロールできる人物であるとされています。

そうした傾向からも,このタイプの犯人は,日常的に暴力性の高い「怒り拡散型」や他のサディスティックな犯人とは,異なる性質をもつことが指摘されています。


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