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自分の主義や主張に反する人々の考えを恐怖で変えさせようとして,一般の市民にたいして無差別な暴力をふるうテロリズムは,背景とする思想の多様化と,組織の国際化が進んでいます。
 
また,一般社会や市民にまぎれてテロを計画する集団を弱体化させるために,水面下で行われる,通話記録やSNS,その他インターネット上や公的記録から集められる情報を使った情報戦は,「戦争2.0」と呼ばれるほど大規模なものになりつつあります。

テロリズムについてはいくつかの分類が提案されていますが,なかでも今回は,テロリストのプロファイリングを目的として提案された,理性的動機型(rationally motivated terrorist),心理的動機型(psychologically motivated terrorist),文化的動機型(culturally motivated terrorist)の3つの類型をご紹介します(Bartol & Bartol, 2012)。

理性的動機型(rationally motivated terrorist)

具体的で現実的に達成可能な目標のために活動するのがこのタイプです。目標の種類は,政治的・社会的・経済的とさまざまなものがあります。

このタイプが使う暴力の種類やテロの対象は,かれらを社会的・金銭的に支援する支持者との関係によって決まります。支持者は一般の市民であることもあり,なかには日本の捕鯨調査船にたいして2005年から調査捕鯨の妨害行為を繰り返すシーシェパード(Sea Shepherd Conservatlon Society)のように,多くの著名人が支援しているケースもみられます。

たいていの場合,理性的動機型のテロリストは人の命を奪うことを避けようとします。その一方で,テロの対象となる人々を支えるインフラや建物に大きな損害を与えようと活動するのが,このタイプの特徴的な点です。
 

心理的動機型(psychologically motivated terrorist)

このタイプのテロリストは,みずからが抱える「敗北感」「正当に評価を受けていない」といった根深い感情から,特定または不特定の相手に「仕返し」をすることで,これまでに自分が経験したつらい出来事への代償を手に入れようとしています。

心理的動機型によるテロの多くは,政治的・社会的な権威がある人物との交渉を望まず,人々を傷つけることにだけ集中しています。

とくに個人が単独でテロ行為に及ぶケースが多いことから,他の組織的なテロリズムにたいして,最近注目されつつあるローンウルフ型との共通点が指摘されています。

文化的動機型(culturally motivated terrorist)

このタイプのテロリストは、文化的なアイデンティティが失われるかもしれないという強烈な危機感からテロ活動に参加しています。

文化的なアイデンティティの中でも,もっとも重要視され,かつ不安定なものが「宗教」です。とくに国際的なテロ組織において,宗教的な過激派組織が占める割合は1980年から増加しており,こうした組織のテロ行為による死者の数も急増しています。

文化的動機型のテロリストは,かれらにとっての絶対的な倫理観や信念から犯行に及んでおり,かれらの願望が完全に達成されない限りは,テロリストが交渉に応じることは少ないと考えられています。


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